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AGAの治療薬「フィナステリド」について知りたい!
AGAを治療する内服薬としてよく知られるプロペシアは、60か国で承認されるほどポピュラーな薬ですが、これは製薬メーカーの商品名です。その主成分は、フィナステリドという化学物質。このフィナステリドがどのように生まれたのか、どう使えば薄毛が改善すするのかをご説明します。
このページの監修者のご紹介

医療法人リアルエイジ静哉会
Dクリニック名古屋(旧AACクリニック名古屋)
チーフ 井野口 具子(いのぐち ともこ)
経歴
美容業界で経験を積んだのち、2005年、Dクリニック名古屋(旧AACクリニック名古屋)の前身である錦クリニックに入職。美容師免許取得から得た知識と美容業界の経験を活かしながら、髪のお悩みをもつ多数の患者さまに対し、発毛治療や髪のお悩みをお聞きするアドバイザーとして活躍してきた。女性ならではの細やかな視点で、医師のサポートや後進の育成に心を砕いている。患者さまがクリニックに滞在していただく際に心地よく感じていただけるような空間づくりや、新しいサービス等を、クリニックスタッフと意見を出し合いながら導入している。
ヘアサイクルを正常に保つフィナステリド
そもそも頭髪が細くなったり、抜けたりするのはどうしてかご存知でしょうか?精神的な影響による免疫不全から起きる円形脱毛症など、理由はいろいろあります。
髪はどうして生えるのでしょう? それは髪の毛の一生ともいえる「ヘアサイクル」に大きな関係があります。頭髪は抜けては生えるの繰り返しとなっています。1日平均で80本以上の頭髪が抜けていますが、健康なうちは同じ数の頭髪が生み出されているので、その量はほぼ一定に保たれます。頭髪が生えてから抜け落ちるまでの周期を、ヘアサイクルと言います。
ヘアサイクルにはそれぞれの時期があります。成長期と呼ばれる髪を作り出す時期。この時期は頭髪を作り出す「毛母細胞」が盛んに分裂します。2~6年ほど成長期が続き、次に成長が止まる退行期に入ります。その後、頭髪を作り出す毛母細胞の分裂が止まり、髪が抜け落ちるのを待つ時期に入ります。これが休止期です。
「プロペシア」は、メルクという会社の商品名で、フィナステリドという化学物資が含まれています。この「C23H36N2O2」という化学式をもつフィナステリドには、ヘアサイクルを正常に保つ効果があるのです。
AGA(男性型脱毛症)の場合は、特に額の生え際や頭頂部が薄毛になりますが、これは男性ホルモンの影響であることがわかっています。テストステロンという男性ホルモンは男女とも体内にもありますが、テストステロンは5αリダクターゼという酵素によって、ジヒドロテストステロン(DHT)という、より作用の強い男性ホルモンに変化します。このDHTは先ほどご案内した毛母細胞の働きを抑制するため、頭髪がしっかり成長する前に抜け落ちてしまうようになるのです。また生えてきても、やはり太く硬くなる前に抜けてしまうので、コシのない細い頭髪が目立つようになります。結果的に、外見では寂しい頭髪の状態になってしまいます。これがAGAです。
フィナステリドは、5αリダクターゼの働きを止め、DHTの生成を抑制する効果があるのです。
5αリダクターゼには1型と2型がありますが、1型は側頭部や後頭部の皮脂腺に、2型は前立腺や前頭部と頭頂部の毛乳頭部分にあります。フィナステリドは2型の5αリダクターゼの働きを止める効果があります。
副作用から開発されたAGA治療薬フィナステリド
ところでフィナステリドがアメリカで開発されたのは1990年代前半のことですが、もともとAGA治療用として開発されたわけではありません。
最初は、前立腺肥大症のための治療薬として開発され、1992年に「プロスカー」の商品名で米国食品医薬品局(FDA)に認可されました。
前立腺は、男性だけにある器官で膀胱の下にあって前立腺液を分泌していますが、その役目はいまだに謎の部分が少なくありません。
この前立腺が老化にともなって肥大すると、隣り合う尿道を圧迫してしまって小尿の出方に勢いがなくなるなどの排尿障害がおきます。その結果、膀胱にたまった尿がすっきりと排出されず、結果的に尿をためる力も衰えることから頻尿などの原因となります。
この前立腺肥大症の治療とAGA治療にどのような関係があるのでしょうか?
答えは、アメリカで発売されたプロスカーの「副作用」にありました。
フィナステリドが配合されたプロスカーを使った人に発毛効果が見られたことから、「フィナステリドはAGA治療に役立つのではないか」との仮説から臨床試験が始まったのです。
結果的に、抜け毛を防ぎ、発毛の効果が認められ、日本では製薬会社のMSD株式会社がフィナステリドを主成分とするプロペシアを発売し、2005年に厚生労働省の認可を受けました。その10年後には特許が切れたため、ジェネリック(後発医薬品)が東和薬品、沢井製薬、ファイザーなど数多くの製薬会社から発売されています。
フィナステリドを主成分とするAGA治療薬は、日米で発売されているプロペシアだけではありません。インドの製薬会社が発売する「フィンペシア」や「フィナバルド」という商品名の薬もあります。
いずれも日本国内で販売されているものと比較すると、薬価が安いのが特徴です。それはインドの製薬会社が新薬開発に巨額の投資をするのではなく、ジェネリックを製造し安価に販売することで『世界の薬局』として機能しているからです。
とはいえフィナステリドを含む内服薬は医師の処方が必要です。海外製品を購入するにはいわゆる個人輸入などに頼らざるを得ません。また、ネット通販で買えるとうたうサイトもありますが、ネット通販で購入した薬が必ず安全かというとそうではありません。おなじジェネリックでも添加物や形状などの違いから、人によって効果が異なる可能性もありますので、ネット通販での購入はお薦めすることはできません。自分で判断せず必ず医師に相談しましょう。
フィナステリドの副作用には要注意
前立腺肥大症の治療のために開発されたフィナステリドは、体毛が濃くなるという副作用からAGA治療に転用されましたが、それ以外にも副作用はあります。
この薬を服用するにあたって、もっとも注意すべき特徴的なものは、女性には使えないということです。特に妊娠の可能性のある場合には、絶対に避けましょう。フィナステリドによって生成されなくなるDHTは、胎児の男性器の形成に不可欠な男性ホルモンだからです。妊娠した女性のお腹のなかでDHTが欠けると、男性の染色体をもっている胎児でも、充分に生殖器が発達しないおそれがあります。
また、男性の場合でも以下のような症状が報告されています。
・勃起不全
・精液量の減少
・性欲の減退
また0.2ミリグラム〜1ミリグラムのフィナステリドを配合したAGA治療薬には、抑うつ症状の副作用があるとされています。
男性ホルモンは人を活動的にさせる働きがありますので、これが抑えられるとうつ病や食欲不振、全身倦怠感などの症状が現れることがありますので注意が必要です。
またフィナステリドは肝臓で代謝されるので、肝臓に既往症がある人は、フィナステリドによるAGA治療を始める際は必ず医師と相談してください。
AGAに特化した医師に相談してから服用を
これらを考えると、プロペシアをはじめとするフィナステリド主成分のAGA治療薬には、さまざまなリスクがあることがお分かりいただけたと思います。
しかし、医師の処方をうけて、正規の薬局で購入して服用する分には、安全性の高いAGA治療薬と言えます。特に抜け毛が一時的なものではなく男性ホルモンの変化が原因となるAGAだった場合は、対策をしないとどんどん進行するおそれがあります。
フィナステリドを含むAGA治療薬は、一般病院の皮膚科でも処方されます。しかし、より効果的にフィナステリドを服用したい場合は、AGA専門クリニックに相談されることをお勧めします。
当Dクリニック名古屋(旧AACクリニック名古屋)も含めて、AGA専門クリニックは豊富な事例から、患者一人ずつのもっとも効果的な薄毛治療法を考えてくれます。フィナステリドを主成分とする薬以外にもAGA治療薬はありますので、他の薬や方法を勧められることがあるかもしれません。体質的にプロペシアなどが合わない場合もありますから、その時にはAGA専門クリニックのお医者さんに判断を仰ぎましょう。
Dクリニック名古屋(旧AACクリニック名古屋)でも、患者様の体質を調べるための様々な検査や、患者様の体質に合わせた治療方法をご提案する「アドバンスト発毛治療」などをご用意しております。よろしければクリニックにお問い合わせください。
ただ、AGAは医師にお任せすれば確実に治るというものではありません。
血流を悪くする煙草を吸いすぎたり、ストレスをためすぎたり、シャンプーの際に乱暴に髪を洗って乾かさないまま寝てしまうといった生活習慣も、抜け毛を加速させる原因になります。自分でできるヘアケアや生活習慣の改善もあってこそ、太くて硬い毛を取り戻すことができるのです。
AGA治療は、抜け毛が気になった時がスタートのタイミングと言えます。初回カウンセリングは無料になっているクリニックもありますので、1人で悩んでいるなら、まずは、AGA専門クリニックに相談してみてください。
注:記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。
サイトの情報を利用し判断・行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。